耳をふさぐ

私は普段朝七時に起きる。

 

ウサギにおやつを与え、それから

自分が飲むためのコーヒーを入れる。

 

そしてしばし、ぼんやりとテレビを見て、新聞に目を通す。

 

これが毎朝のルーティーン。

この時間は、普段通りに一日を始めるための

私にとっては大切な精神統一の時間。

 

同居している母は、もう少し早く起きている。

私が起きたらすぐに

もしかしたら、それを待っていて

仕事の話を大音量で勢いずいた調子で

話しかけてくる。

 

そんな時、私の一日の大切な始まりの時間は、無くなる。

 

イライラするところから始まる。

 

今朝は、起き抜けから、少し頭が痛い予感がしていた。

頭痛が起きるときは、長年の頭痛との付き合いで

もうすっかり把握できている。

 

今朝は、そんな日だった。

私は、体調がすぐれなくても、母には決してそんなことは言わないし、

そぶりも見せないようにしている。

なぜなら、

 

頭が痛い。

 

なんて言おうもんなら、

必要以上に心配し、薬は飲んだのか、

最近、疲れているからではないのか、

今日は、車で出かけないほうがいいのではないのか。

 

など、矢継ぎ早に、

責め立てられるような言い方をされるに決まっている。

大きなお世話だ。

お願いだから、余計なことはしないでくれ。と願う。

 

忙しい私は、家ではなるべく静かに、過ごしていたいし、

しゃべりたくないのだ。

 

娘として、親の話を聞いてやらない、

思いやりのない、冷たい娘なのだということは重々自覚している。

 

母と私は合わないのだと思う。

一緒に暮らしていなかった若いころは、

今より私は優しい娘だったし、反抗もすることもなかった。

 

母は、私に依存しているところがあるから、

きっと離れて暮らすことはできない。

 

せめて、家の中では会わなくて済むように別々の場所にいたい。

 

今朝、起き抜けから、

仕事の話が始まった。

 

私ははっきりと、これからはじまるであろう頭痛を自覚し、薬を飲んで

母には見えない角度で耳に人差し指を突っ込み

耳をふさいだ。

 

意外と、テレビの音も、母のうるさい声も

全く聞こえなくなったことに驚いた。

 

こんな、子供じみたことが効く!

 

ということに心底驚いた。

母の声は大きい。

 

これからは、この方法は有効だ!

うるさく感じるときは、耳をふさげばいい。

 

そんなことを発見した、今朝の出来事。