始まり

始まってしまっているようだ。

キスの人は、キスをした時点で。

そりゃそうだ。

 

拒まなかったのだから。

私は、まだ、引き返せる。

恋は、落ちるものだ。私は、落ちてはいない。

楽しんではいるけど。

 

昨日、いつものゴルフの練習場で待ち合わせて

 

準備してあったプレゼント交換をして

少し、練習して、ご飯を食べに行った。

 

そのあと、行きたかった店は閉まっていて

別の店を探しながら、散歩をした。

 

信号が赤になる直前、渡ってしまえ!

と、二人走った。

初めて、手をつないだ。

 

なんだか、若い子みたい。

それでも私は、そんなに、ドキドキしない。

すっかり、年老いたのか、いや、相手によるのだろう。

 

あの人の時は、心臓が口から出そうなほど

ときめいたのだから。

体の中から、かあーーっと、熱くなるのを感じたのだから。

そんなの、もう、いらない。

 

こういう時、女は少し、甘えたふりをして

くっつき、距離を急速にちじめるものなのか。

 

狙っているときは、きっと、私はそうするだろうけど

今回、そんなに、がっついていないから

 

握られた力に、強く、反応することもなく

されるがままだった。

 

今は、それでいい。

 

キスの人は

もっと甘えてほしい。というけど。

私は、うまく、ねたねたと、甘えられない。

 

強くなりたいと願い、今まで生きてきたから

すっかり、かわいらしい部分を、なくしてしまった。

 

キスの人は、私のことを、やっぱり

まだ、組織の汚いごたごたを知らない、まっさらで

真っ白な人間だと、思っている。

 

それで、いい。